第2章 地政学的リスク:資産価格と金融安定性への影響
地政学的リスクイベントが資産価格に与える影響は総じて限定的である。しかしながら、軍事紛争などの重大なイベントは、株価の大幅な下落につながり、ソブリンリスク・プレミアムを上昇させる可能性がある。財政余地や外貨準備バッファーが限定的な新興市場国への影響は特に大きい。地政学的リスクは、貿易や金融の連関を通じて他国に波及する可能性もある。投資家は株式・オプション市場に地政学的リスクを一定程度織り込んでいるようだが、リスクが顕在化すれば金融市場のボラティリティを誘発しかねない。急激で重大な地政学的リスクイベントは、銀行やノンバンク金融機関の安定性に影響を及ぼしかねず、マクロ金融の安定性にとって潜在的なリスクとなる。地政学的イベントに由来する金融安定性リスクを軽減するために、金融機関とその監督機関は、ストレステストやシナリオ分析などを通じてそうしたリスクの特定・定量化・管理を行うべく、十分なリソースを配分すべきである。新興市場国と発展途上国は、負の地政学的ショックの影響を緩和するために、金融市場の発展・深化や、十分な財政政策余地および外貨準備の維持についての取り組みを継続すべきである。