不確実性の高まりと政策の転換によって、財政見通しが変わりつつある
世界の公的債務の見通しが上方改定されているほか、関税と不確実性、市場のボラティリティ、防衛支出の増加、対外援助の困難な状況を要因にリスクが高まっている。各国は、債務を削減し、不確実性の高まりに対するバッファーを構築するために、信頼性のある中期的枠組みの範囲内で段階的な財政調整を実施しなければならない。エネルギー補助金や年金といった主要な支出プログラムの改革は、成長を促進しつつ財政の脆弱性を低減させるために極めて重要だ。このような改革を進めるためには、改革が利害関係者に受け入れられることが重要となる。世論の支持を固めるには、戦略的な設計と効果的なコミュニケーション、強固なセーフティネット、ガバナンスへの信頼が必要だ。
推計と予測は、2025年4月14日までに入手可能な統計情報に基づいているものの、最新の公表データが全ての場合において反映されているとは限らない。各国・地域のデータ最終更新日については、オンラインのWEOデータベースで示す注意事項を参照。
第1章 不確実性の中での財政政策
不確実性の高まりと政策の転換によって、財政見通しが変わりつつある。世界の公的債務の見通しが上方改定されているほか、関税と市場のボラティリティ、防衛支出の増加、対外援助の困難な状況を要因にリスクが高まっている。各国は、債務を削減し、不確実性の高まりに対するバッファーを構築すべく、信頼性のある中期的枠組みの範囲内で段階的な財政調整を実施しなければならない。
第2章 世論が重要:エネルギー補助金と年金改革を成功させるポイント
本章では、財政の脆弱性を低減させ、包摂的な成長を促進する上で極めて重要なエネルギー補助金と公的年金の改革に対する世論の支持を得るための戦略を検討する。エネルギー補助金の改革は効率性を高め格差を是正する。そして年金改革は、制度の持続可能性を確保し高齢者の貧困問題を緩和する。こうした対策はコストが明らかな一方で、利益が拡散しているため、国民が抵抗感を抱く。本章では、大規模言語モデルを用いて、利害関係者のセンチメントを定量化し、改革の受け入れ度合いをリアルタイムで測る尺度を紹介する。調査結果によると、慎重な設計とタイミング、付随する措置、ガバナンスが利害関係者のセンチメントを改善し、野心的で持続的な改革を進めるのに役立つ。再分配政策と戦略的コミュニケーションは、大衆の抵抗感を軽減し得る。